パチパチという音と、ほのかな暖かさとともに、チドリは目を覚ました。

まぶたをこすりながら辺りを見回すと、そこは見慣れない山小屋。次第に意識がはっきりするにつれ、チドリは自分が迂闊にも眠ってしまった事を理解する。逃げている立場としてはあまりに軽率。さらに何者かによってこの場所に運ばれたらしい。 

自分を誘拐した奴らの仲間か、そうでないかはわからない。焦りと不安と戸惑いが、ねじれてこじれて心を揺らす。そんな中、ふといい匂いがこの部屋を包んでいることに彼女は気がついた。匂いの元は目の前の囲炉裏で、そこには大きな鍋が掛けてあった。

鍋の中を見てみると、太めのうどんが様々な山菜と一緒に煮込まれている。自分をこの小屋に運んだ誰かが作ったのだろうか。うどんは程よく煮詰まっていて、味噌の焦げた香りが食欲をそそる。そういえば朝から何も食べていない。目の前には使えと言わんばかりの小皿と菜箸。誰の根城かも分からない場所で、こうあからさまに食べろと言われて食べるバカはいない。そんな風に否定出来ないほどチドリは腹が減っていた。チドリが頭を抱えて悩んでいると、突然正面の扉が乱暴な音を立てて開き、一人の大男が現れた。

「なんだ、目ぇ覚めたのか」